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本『ザ・ファシリテーター』読んだ

ザ・ファシリテーター

ザ・ファシリテーター

  • 作者:森 時彦
  • 発売日: 2004/11/12
  • メディア: 単行本

友人から紹介されて「読んだらぜひ感想を聞かせてほしい」と言われていた。読んでから少し時間が経ってしまったが、感想を書く。

あらすじ

黒崎涼子は入社4年目である会社の開発センター長に大抜擢された。前の部署でマーケティング部の環境を変え、業績を一気に引き上げたことを評価されてのことだった。
前の部署でうまくいったとはいえ、次の部署はベテランのエンジニアたちが集う開発センター。開発に関する知識もなく、部下より年下の自分がなぜ開発センターに異動になったのか。当惑しつつも開発センターの環境を変えるべく、マーケティング部で用いたファシリテーションスキルを発揮して、困難に立ち向かっていく。

感想

まずエンジニアは出てくるが、エンジニアリングの話は出てこないし、エンジニアの話でもまったくない。あくまでもファシリテーションを通して、環境改善を行っていく話だ。人間関係を円滑にし、かつ会社に貢献できるアイディアを捻出するのにファシリテーションを行っていく様子を小説形式で書いた本になっている。ちなみにファシリテーションとは化学の触媒みたいなもので、それがあるだけでは何の効果も発揮できないけども、ある場所で人々のコミュニケーションやアイディアを促進する方法のこと、と説明されている。ファシリテーターはその方法を実践する人のこと。

こんなにうまくいくかな?と思う部分も多少はある。いじわるな人が後半以降にならないとほぼ出てこないし、たしかに困難には直面してるけどファシリテーションのおかげと考えるには話がきれいだなと感じる。けれど普通場をなごませるために使うアイスブレイクはどういった場面で使うのがいいのか(必ずしもミーティングの初めじゃなくてもいい)、他にどんな種類のアイスブレイクがあるのか、議題の進め方にはどういったものがあるのか、ファシリテーションの道具箱とは、ファシリテーターが守るべきスタンスとは、など結構面白い情報はあった。

一つあまり活かしきれてないのではと思った前提条件を言うと、主人公が女性で独身で部下より年が若く新しい環境に大抜擢されたというところ。小説に出てくる会社の人たちはノウハウがあまりないよそ者が急にデバってきたことに文句は言ってるけど、「女は黙ってろ」くらいのことを言って一切話を聞いてくれないみたいなことは全然なくて、比較的いい人たちで論理的に話を進めたらはいはいってちゃんと話聞いてた。だからファシリテーションというものが一体どんなものなのか、どんなときに有効かは読んでてなるほどと思いながら進められるんだけど、主人公自身のステータスがハードルとは感じられなかった。差別になりえるステータスだよねと軽く触れる程度にしかならないなら、こんなステータス設定いらないと思う。

社内に研修プログラムがあればそこで教えてもらえそうな内容でもあるが、研修プログラムは限られた時間の中で会社の目的に沿う形で開かれる性質上、ファシリテーションに限ってどういうものがあるのかを知る機会って意外と少ない気がする。ほかの人が企業の研修に参加してる様子を見ている感覚になれる本と思って読むとしっくり来ると思う。

どちらかといえばマネージメントをやる立場の人に役立つ本な気がしているが、マネージャー職じゃなくても会社で何かのミーティングの司会をすることはあると思うので、そういう人はミーティングの目的を念頭に置きながら、この本に書かれてるファシリテーションのいろんな実践を取り入れてみるといいかもしれない。読み物としても普通におもしろいので、司会することなくても読んでみていいと思う。